「もっと力を入れて!」
「全力で動こう!」
スポーツやトレーニングでは、このような言葉を耳にすることがあります。
もちろん、大きな力を発揮することはスポーツにおいて重要です。しかし、常に全身に力を入れていれば、良いパフォーマンスにつながるとは限りません。
むしろ、必要のないところまで力が入る「力み」によって、動きが硬くなったり、スピードを出しにくくなったりすることがあります。
大切なのは、ただ力を入れることではなく、「必要な瞬間に、必要な場所で力を発揮すること」です。
今回は、スポーツにおける「力み」とパフォーマンスの関係について解説します。
「力む」と身体はどうなる?
緊張する場面や、いつも以上に頑張ろうとしたとき、無意識に肩が上がったり、手を強く握ったりした経験はないでしょうか。
身体に余計な力が入ると、筋肉が必要以上に緊張し、関節の動きが小さくなったり、動作がぎこちなくなったりすることがあります。
例えば、速く走ろうとして上半身に力を入れすぎると、腕振りが硬くなり、スムーズな走りを妨げることがあります。
ボールを投げたり、ラケットを振ったりする動作でも同じです。最初から最後まで全身に力を入れてしまうと、身体の連動をうまく使えず、かえってスピードや力を伝えにくくなることがあります。
「力を入れているのに思ったほど力が出ない」という場合、筋力だけではなく、余計な力が入っていないかを確認してみることも大切です。
大きな力を出すためにも「脱力」が必要
「力を抜く」と聞くと、身体をだらっとさせるイメージがあるかもしれません。
しかし、スポーツで必要な脱力は、単純に全身の力を抜くことではありません。
必要のない筋肉の緊張を抑えながら、必要な瞬間にはしっかりと力を発揮できる状態をつくることです。
走る、跳ぶ、投げる、蹴るといったスポーツ動作では、身体は常に同じ力を出し続けているわけではありません。
リラックスして動く場面と、一気に力を発揮する場面が繰り返されています。
この切り替えがスムーズにできることで、効率よく身体を動かしやすくなります。
つまり、「力を抜くこと」と「力を出すこと」は反対ではなく、どちらもパフォーマンスを高めるために必要なのです。
力みは疲れやすさにもつながる
必要以上に身体へ力を入れ続けることは、動きだけでなく疲れやすさにも影響します。
競技中、肩や腕など本来それほど力を入れなくてもよい部分まで緊張させ続けていれば、それだけ余分なエネルギーを使うことになります。
短時間では大きな違いを感じなくても、試合や練習が長くなるにつれて疲労につながり、後半に動きが硬くなることもあります。
特に試合では、「失敗したくない」「もっと頑張らないと」といった気持ちから、普段より身体に力が入りやすくなります。
そんなときこそ、肩が上がっていないか、呼吸が浅くなっていないかなど、自分が力んでいるときの特徴を知っておくことが大切です。
「力を抜く」こともトレーニングする
余計な力を抜く感覚は、試合になって突然身につくものではありません。
まずは普段のトレーニングから、自分の身体にどこまで力が入っているのかを意識してみましょう。
同じ動作でも、必要以上に歯を食いしばっていないか、肩に力が入っていないか、手を強く握りすぎていないか。
こうした部分に目を向けるだけでも、自分の「力み」に気づきやすくなります。
また、ゆっくりとした動作から始め、余計な力を入れずに正しい動きを繰り返すこともひとつの方法です。動作に慣れてきたら、徐々にスピードや負荷を高めていきます。
スポーツでは、「力を出せること」だけでなく「力を抜けること」も大切な技術です。
一生懸命動いているのに身体が硬くなる、力を入れているのにスピードが出ないというときは、さらに力を加えるのではなく、一度「余計な力が入っていないか」という視点から動きを見直してみてはいかがでしょうか。