世界で戦うために私が貫いたのは、特別な才能でも奇抜な技術でもなく、体格差に臆せず全身を使い切り、本番で自分の感覚を信じ切ることでした。京都・西院のセミパーソナルジムY-TRAININGで指導を担当している村上幸史です。この記事は前編の続きとして、日本人として世界と戦う考え方、2009年ベルリン世界陸上で銅メダルを獲ったあの瞬間の心境、そして次の世代へ伝えたいことを、今日の練習に持ち帰れる形でお話しします。

前編からの続き——世界と戦う「私なりの方法」

前編では、目標の立て方や練習の原動力、トレーニングへの向き合い方をお話ししました。後編は、世界の舞台で戦うために私が実際にやってきたこと、メダルを獲った瞬間の心境、若い選手へのメッセージを、皆さんの練習に応用できる形でまとめます。派手さはありませんが、地味なことほど、そのまま日々の練習に持ち帰れると私は思っています。

「日本人の体格では世界で戦えない」——私はそう思いません

やり投げの世界大会に出ていると、「日本人の体格では世界で戦えない」という声をよく耳にしました。確かに、上位の選手たちは私より一回りも二回りも大きい。数字だけを並べれば、不利に見えるのは事実です。それでも私は、体格だけで勝負が決まるとは考えていませんでした。

私が高校から現役引退まで一貫して大切にしたのは、一つのことにこだわりすぎず、当たり前のことを積み重ねることでした。その柱の一つが「総合的な体力作り」です。腕を強くしたい、この動きを直したい——そう思ったときでも、その部分だけを見るのではなく、常に全身のことを考えて取り組みました。やりを遠くへ運ぶのは腕の力だけでなく、地面から足・股関節・体幹を通って伝わる力も大きいと考えているからです。運動連鎖という言葉でお伝えしているのは、この「力の伝達」のことです。

この姿勢のおかげで、大きなスランプに陥ることは少なく、勝負どころで力を発揮できました。正直に言えば、逆もあります。若い頃、一つの動きだけを直そうと躍起になった時期ほど、全体のバランスを崩して調子を落としました。うまくいった経験も、そうでない経験も、行き着いた答えは同じです。世界と戦う武器は特別なものではなく、全身を意識して力を伝え切ることでした。

陸上トラックで練習する選手
派手さより、全身を使った当たり前の反復を積み重ねる。

ベルリンの決勝、あの2投目で考えていたこと

2009年のベルリン世界陸上、決勝の2投目。この一投が銅メダルにつながったのですが、あのとき私は、技術的なことを何一つ意識していませんでした。肘の角度も、助走のリズムも、投げの角度も、頭の中にはありません。

代わりに気持ちを向けていたのは、「投げの瞬間まで、どれだけ待てるか」という一点だけでした。溜めを最後まで我慢して、力を出すべき瞬間まで待つ。そこに挑戦することだけを考えていました。これは、それまでの長い練習の積み重ねがあったからこそできたことです。技術は普段の練習で体に染み込ませておき、本番では細かいことを考えず、自分の感覚を信じる。これが私のスタイルでした。

皆さんにも思い当たることはないでしょうか。大事な場面で「あれもこれも」と考えすぎて、かえって動きが硬くなる。本番は、考える場ではなく感じる場だと私は思っています。ただし、その感覚を信じられる下地は、地味な反復でしか作れません。感覚を信じるというのは、練習をサボってよいという意味では決してありません。むしろ逆で、日々の仕込みがあるからこそ、本番で頭を空にできるのです。

場面 意識すること 避けたいこと
本番 感覚を信じて、溜め・間という一つの課題に集中する 技術を細かく考えすぎて動きを硬くする
日々の練習 全身を連動させた動きを反復し、体に覚え込ませる 一つの部分だけを直そうとして全体を崩す

若い選手へ——技術を成り立たせる「何か」を探し続ける

技術を追い求めることは、選手なら誰でもします。それ自体はとても大切なことです。ただ、私がいつも感じていたのは、「何か」があるから、その技術が成り立つということでした。同じフォームを真似ても同じ結果にならないのは、その奥にある「何か」——身体の使い方や力の伝わり方、動きの質——が違うからだと思います。

その「何か」を探し続けるために、私はトレーニングと思考を何よりも大切にしてきました。普段の練習では、考え抜いてトレーニングをし、その結果をまた考える。この繰り返しです。地味で時間もかかりますが、この往復をやり続けた者が最後に強い、と私は今でも思っています。やり投げの経験を野球の指導に活かす取り組みでも、お伝えしているのはこの「考えて動き、動いて考える」姿勢そのものです。

トレーニング前に身体を整える様子
考えて動き、動いてまた考える。この往復が下地をつくる。

情報に惑わされず、自分の軸を持つ

今は情報化社会で、さまざまな技術やトレーニングが次々と披露されます。学ぶべきことも多いのですが、現場で実際にやることは、もっとシンプルだと私は考えています。長いものを遠くへ投げるには、どんな要素が必要で、そこからどんな動きが成り立ち、何を目指すのか。この体の使い方を積み上げることが、何より重要です。

情報に惑わされず、自分の軸を持つ。日本人でも、やり投げで世界と戦える競技になってきました。体の使い方を正しい順番で積み上げていけば、世界の舞台は決して夢ではないと私は思っています。そしてこれは、やり投げに限った話ではありません。走る、投げる、打つ——どんな動作でも、進む部分と残る部分、溜めと間を大切にして、全身で力を伝える。この考え方は共通しています。

私が京都・西院のY-TRAININGでお伝えしているのは、こうして体に染み込ませた感覚と、全身を連動させる身体の使い方です。当ジムは阪急「西院」駅・「西京極」駅から車で4分、右京区梅津にあるセミパーソナルジムで、1回60分・最大5名・完全予約制。水曜定休で10:00〜20:00まで開いており、駐車場もあります。やり投げでも、野球でも、走ることでも、「もっと力を伝えたい」と感じている方は、まずは60分の無料体験で、ご自身の身体の使い方を一緒に確かめてみませんか。

日本人の体格でも、本当に世界で戦えるのですか?

体格は大きいに越したことはありませんが、私はそれだけで勝負が決まるとは考えていません。全身を連動させ、地面から生まれた力をやりや道具に伝え切れば、体格差を埋められる部分もあると感じています。実際に私は、自分より大きな選手たちと同じ舞台で戦ってきました。

本番で緊張して実力が出せません。どうすればいいですか?

本番は、技術を細かく考える場ではなく、自分の感覚を信じる場だと私は考えています。ただし、その感覚を信じられるのは、日々の反復で動きを体に染み込ませているからです。緊張して当たり前と受け止め、当日は「最後まで待つ」など一つのシンプルな課題だけに意識を向けると、動きが素直になりやすいと感じています。

陸上やり投げの考え方は、他のスポーツにも役立ちますか?

役立つと考えています。全身を連動させて力を伝えるという考え方は、投げる・打つ・走るといった多くの動作に共通するからです。Y-TRAININGでは、野球や陸上をはじめ、さまざまな競技や目的の方に、同じ原則をお伝えしています。無料体験でお気軽にお試しください。